コロナの流行後も生き延びるために意識すべきキーワード

5月20日、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)がこんなアナウンスをしました。
「4月28~29日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録に、『新型コロナウイルス流行後に米経済が回復しても、一部の業態の事業は生き延びられない恐れがある』という見通しが示されていた」と。

つまり、コロナ後に生き延びることができない事業があるだろう、というのです。
これは米国に限らず世界で同じことが言えると思います。皆さんの事業は、仕事は大丈夫でしょうか。

コロナ禍は確かに大変ですが、コロナに限らず世界では常に多くの会社が生まれては消え、成長しては衰退していきます。平成元年の世界時価総額ランキングを見ると、トヨタ自動車をはじめ多くの日本企業が名を連ねていました。TOP50の中に入っていた日本企業は、なんと32社。しかし、令和になった現代はどうかというと、TOP50の中に入っているのはトヨタ自動車ただ1社のみです。

では、なぜトヨタだけが時価総額を落とさず生き残っているかという理由を1つのキーワードで表すとしたら、「変化」でしょう。トヨタの現場において「変化」というキーワードは、常に意識されているものなのです。

実際に現場で仕事をしていて印象的だったのは、先輩からいつも「今やっている方法が一番いいと思うなよ」と言われていたことです。どんな日常的な業務の手順であれ、現状を常に否定し続け最善の方法を探求していくというわけです。

「現状を否定する」というとネガティブに捉えられるかも知れませんが、見方を変えれば新しいものを生み出す“エネルギー源”ともいえるでしょう。これまで多くの経営者が過去を否定して新しいサービスを生み出してきていますが、ビジネスの世界では、現状を肯定して立ち止まっていると新しいものは何も生まれてきません。

しかし、多くの企業では現状維持の姿勢が目に余るように思えます。
一般企業の現場の人に話を聞くと、「決して現状に満足しているわけでもないし、変えなければいけないのは分かっている」と言いますが、結局は新しい一歩が踏み出せずに、ズルズルと先送りしながら今まで通りの状態を続けてしまっているのです。

こうしたことが起こるのは、「現状維持バイアス」の影響が少なからずあるのではないかと考えます。「現状維持バイアス」の話としてビジネスの現場でよく言われる「ゆでガエル現象」などはまさに典型ですよね。あの言葉は米国GE社のジャック・ウェルチ氏がビジネスの現場で使いはじめたといわれています。

実はこういった話は米国に限らず世界共通であり、中国の昔話でも同様の意味を持つ話があるのでご紹介しましょう。

『守株待兎』(しゅしゅたいと)

ある農民が、切り株に突進して気絶するウサギを見ました。
農民は、まんまとそのウサギを捕らえることができました。
彼はこれからも必ずその切り株にウサギがぶつかって手に入ると思い、
以降、その切り株を自分のものとして大事に守りながら
一生を終えてしまいましたとさ。

これは中国戦国時代の法家である韓非の著書『韓非子』にある、「株を守りて兎を待つ」という話です。
この話のキモは、「上手くいった今の状態がずっと続く」と考えてしまった結果、農民は寂しい人生を送ってしまったということです。

コロナ禍を機にこのような寂しい仕事人生に突入してしまわないためにも、まずは自分の中にある「現状維持バイアス」というものを自覚して、『人間というのはそういった考え方に陥りやすいのだ』と認識しておくことが重要です。

そのうえで、コロナが終息に向かいつつある今こそ“変化”を選択していくべきでしょう。
コロナ以前の自分がピークだ、あの状態に戻すんだ、などと言っていると、自身の成長は止まってしまうでしょう。

生きていくうえでは誰しもが「明日はもっといい日になりますように」と願っていると思いますが、願っているばかりでは叶うはずもありません。よりよい人生を生きたければ、まさに必要なのは変化であり、変化を起こすための行動です。

毎日同じ動きをするのが常識だと考えず、昨日と違うことを考え、昨日と違うことを行い続けなければ、ポストコロナの中で不安を抱え続けることになってしまうのではないかと思います。

カイゼンに関する講演依頼、受け付けております。

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