トヨタで言われる「後工程はお客様」の「後工程」とはなんなのか

トヨタの現場でよく言われる「後工程はお客様」「後工程」は、読み方として「あとこうてい」と読みます。この「後工程」は、いったいどういう意味なのでしょうか。本サイトのコラムでも「前工程は神様、後工程はお客様」というタイトルで書いていますが、ここでも改めて考えてみたいと思います。

後工程はお客様

「前工程は神様」は、仕事があることに対する感謝

「前工程は神様、後工程はお客様」と聞くと、多くの人が「工場の話か」と思われるかも知れませんが、まったくそんなことはなくて、仕事をする人すべてに当てはまる話です。

仕事というのは様々な工程で行われ、誰しもが何かしらの工程に携わります。自営業で一人で経営しているなら別ですが、多くの人が一人ですべての工程を行うことはないはずです。「前工程は神様」というのは、「自分の元に仕事を提供してくれる人に感謝しよう」ということです。仕事をしていると忘れがちですが、目の前に仕事があるというのは当たり前のことではありません。仕事を失ったり、引退した人がよく「仕事があることはありがたいことだ」と言いますが、日々仕事をしている時からそもそも「目の前に仕事があること」をありがたく思うべきです。

「後工程はお客様」という意識は誰しも必要

それを前提に踏まえたうえで、重要なのは「後工程」です。後工程というのは、自分の後に続く次の工程を指します。次の工程では同僚だったり後輩だったり、別の人間が担当することがほとんどだと思いますが、「後工程はお客様」というのは後工程を担当する人たちをお客様のように考えて真摯に対応しなさい、ということです。真摯に対応するというのは気持ちの話なのですが、こういった気持ちを持つことで全体の業務は円滑に進み、生産性が上がるものなのです。

先ほど書いた通り、組織では自分一人で完結する仕事はほとんどありませんので、自分の次に続く人たちがより気持ちよく仕事を進められるためにも、「後工程の人はお客様だ」という意識を持つことが大切なのです。

「後工程」への配慮をすると生産性は上がる

「後工程の人はお客様だ」という意識を持つということは、後工程の人が気持ちよく仕事をこなせるように配慮をすることでもあります。配慮というのは具体的に、後工程の人が仕事を進めやすくするためのちょっとした工夫を施してあげることです。たとえば、直前までの工程についてすぐに理解できるように作業内容や要点について分かりやすく書いてまとめてあげたり、作業内容を口頭の説明だけでなく可視化するだけでも効果はあるでしょう。ちょっとした配慮ですが、こういった気遣いを積み重ねていくことで信頼を育み、全体としての生産性向上に繋がっていくのです。

根底に「前工程」や「後工程」の人への感謝の気持ちや思いやりがあれば、どういったことに配慮したら喜んでもらえるのか、仕事がうまく回っていくのかわかるはずです。そして、いくつかある工程での「リレー」は円滑にバトンタッチされていくはずです。

「後工程」を意識すると”全体”への意識に繋がる

また、「後工程」を意識することで全体の工程を意識することにも繋がります。仕事をうまく進めていくうえでは、全体の工程を把握することが大切です。自分自身の業務ばかりに目を向けていると、全体の動きになかなか意識を向けることはできません。しかし、目の前の業務が他の人とどう繋がっているかを意識することは、仕事全体を俯瞰して見ることになります。

ただ単に目の前の業務だけをこなすのではなく、「どういったお客様から、どういった依頼を受け、どのような工程を経て、いつまでの納期に向けて対応しているのか」といった工程を知っているのと知らないのとでは、仕事の進めかたや業務の精度に大きな違いが出てくるはずです。

全体を把握するとサービス品質が高まる

また、全体を把握することは、問題が発生した時にすぐに対応できることにもなります。例えば、問題が起きたら「この業務はあの部署と関係しているから、連携しながら問題解決をしよう」など、的確でスピーディな対応ができるのです。その結果、製品やサービスの品質を高めることになり、仕事の精度が上がっていくことになります。

仕事を引き受ける前に、まずは前工程と後工程を意識して全体感の把握をしてみましょう。

「後工程はお客様」を含め、様々な思考が含まれているのが「トヨタ式カイゼン」です。カイゼンを社内に浸透させるには、まず講演などで全員が共通認識・共通言語を持つことが重要です。

トヨタ式カイゼンについての講演を依頼したい方はこちらをご確認いただき、お気軽にお問い合わせください。

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