PDCAを回すなかで、何かを実行する際にはミスがつきものです。トヨタでは、そうしたミスがあった時は隠さずに皆の見えるところに出す習慣があります。
これは、ミスをした人をさらし者にしようというのではありません。そうすることで解決策を皆で考えようというのです。自動車の製造ラインなどでも、不具合が見つかるとラインを止め、皆で解決策を考えます。そして、解決させてからまたラインを動かし始める、という動きをしています。
日本的な失敗の隠蔽方法に「先送り」があります。不良を隠したとしても、その場はスムーズに仕事が流れるかも知れません。しかし、情報公開時代の現在において、このような先送りはもう通用しないでしょう。
失敗はいずれ明るみに出ますし、そのときに対処しようとしても事態は発生時より悪化しているのではないでしょうか。不良を積極的に見せていくことで同様のミスが発生することを減らし、全体の改善につなげていくのがベストといえます。
また、ただミスを目の前に出すだけでなく「バッドニュースファースト」というキーワードもよく聞こえていました。トラブルが発生したら真っ先に伝えなさい、ということです。実際、生産ラインでは誰もがすぐにラインを止められる仕組みがあり、誰かがミスに気づいたら止めることができました。そこで「責任」を追及するよりも「原因」の追求をして、改善していくわけです。
私がメカニックをやっていた頃に研修講師の方に聞いた話として、トヨタ内では有名なアメリカトヨタの例があります。アメリカトヨタで大きなミスをした課長が、上司に報告をしたあと社長室に呼ばれたそうです。その課長は「レイオフされてしまうのでは(クビになるのでは)」と思い、「家族に何と説明したらいいのだろう」とか「家のローンをこれからどうしよう」などと考え、パニックになっていきました。なんとか震えを押さえながらも社長室に入ると、社長から開口一番「さて、再発防止をどうしようかね」と言われたのだそうです。緊張が解けたその課長は、涙を流しながら返事をし、社長と一緒に再発防止策を考えていったのだとか。
これは、「責任追及より原因追求」の分かりやすい事例だと思います。この事例のように、ミスをした人を追及するのではなく、ミスが発生した原因を追究し、それを改善していくことで会社は前に進んでいくのではないでしょうか。皆さんの職場でミスが発生した際には、是非ともそれを見えるところに出して共有しながら、原因を追究して改善していって欲しいと思います。