トヨタの現場の目標設定は、特徴的な面があります。たとえば、1+1=を、「30にできないか?」「40にできないか?」果ては「100にすることはできないだろうか?」と考えることがあるのです。
「1+1=100って、そんな無茶な!」と思わず口からこぼれてしまうかもしれませんが、実際、私も上司からの指示の中で何度も「そんな無茶な!」と口にしてしまうことがありました。
例えば、販売店では週末などに行われるフェアやイベントにおいて集客目標をいつも設定しています。そこで「次回のイベントでの集客目標」をみんなで話し合っていた際に、店長から「今度のイベントは、先月の2倍のお客さんを集めてよ」といった指示が飛んできました。
「そんな無茶な!」と口からこぼしている新人の私をよそ目に、周囲の先輩たちは反論することもなく、「店長、2倍のお客さんを集めるとなると、こういうやり方はどうでしょう」「いや、こんなやり方もあるんじゃないかな」と次々に意見を出し始めていくのです。
これは、店長の性格が悪かったというわけではなく、そういった『思考の飛躍』を期待して無茶な指示を出していたというわけなのです。
人は誰しも目標を達成したほうが気持ち良いに決まっていますから、無難な目標に落ち着かせたがります。特に企業の「人事評価制度」などにおいては「あまり無茶な目標を立ててしまうと自分が苦しくなるし給料にも影響するし……」などと考えて低い目標を立てる人が非常に多いように思います。
ただ、組織や個人の能力の限界へ挑戦して得られるものは、達成率の数字以上のものがあるはずなのです。無難な目標ばかりを計画し続けることは、自らの能力に自ら壁を決めてしまうようなものではないでしょうか。
そういった意味でも、時には「非常識な目標」を立てて思考を飛躍させてみたり、視点を全く異なるものに変えてみる、ということも重要になってくるはずなのです。そうすることで、自らの能力を引き上げることに繋がりますし、ひいては組織としての底力も上がっていくのではないでしょうか。