「人材が不足している」というのは、どの企業でも聞かれる話です。
少子化も進み、これから更に労働者人口は減少の一途を辿るのかも知れません。そうなりますと、一人当たりの業務量が増えてきて「最近なんだか忙しくなった」という方も多いのではないでしょうか。
私の周りでも、「自分の担当する業務ばかりが忙しくて、なかなか家に帰れない」とか「手伝ってもらいたくても自分しか分からないし」といった方を数多く見かけます。ただ、こういった「単能工」で「多量」の働き方では、改善活動はなかなか上手く進みません。
トヨタではこういった「仕事のムラ」を少なくするため、昔から「多能工」という働き方が推奨されていますし、実際に仕組み化されています。「多能工」とは特定の業務を特定の人が担当するのではなく、特定の業務を様々な担当者で行うことです。そうすることで、誰が担当しても仕事が進みますし、多様な視点が入っていきますので改善提案も活発になっていくのです。
よく改善の現場に携わりますと「あの仕事はあの人じゃないと触れないから……」といった古参社員やお局様の壁にぶち当たることがあります。これでは、改善が進みづらいのは誰でも容易に想像がつくでしょう。
「多能工」の働き方の場合、ある業務で改善が進んだら、それを横に展開することもスムーズになります。そうすることで成功体験やノウハウが全社に広がっていくわけです。これをトヨタでは縮めて「横展」と呼んでおり、何か成功事例ができるとすぐ「じゃあそれ横展して」というような指示が出ていました。
ただ、「多能工」で注意すべきなのは、単に「多能職」の人を増やしたり、グループを作るだけでなく、コミュニケーションを活発にするために「視える化する」ことを併せて考えなければなりません。誰が何をどこまで進めているかが分からなければ、せっかくの多能工も統率が取れなくなってしまいます。
また、人事評価制度もできる限り連携させる必要があります。「多能工になればなるほど評価され、給料に反映される」という形にしなければ、「そんなにたくさんの仕事を担当したくないです」と不満が出てきてしまいます。
実際、ホテル再生事業の「星野リゾート」でも、ホテルの受付や配膳、掃除などの業務を多能工化し、少ない人数で多くの業務を回すことに成功したそうです。
今までの体制を変更することは大変ですが、面倒がらずに「多能工化」と「視える化」が進めることができれば、改善活動は大きく前進することになるはずです。