職場では自分が動く「動線」を意識することが重要です。

その動線を作るうえで、身の回りに置く備品というのは非常に大きな意味を持ちます。トヨタの現場でも自動車の部品やオイルなどの油脂、整備に使う工具や掃除用具など様々なモノが置かれていました。そのモノの置かれ方にはある一つの特徴があったのですが、それはなにかと言うと『3定』です。

3定とは、『定置・定品・定量』のことで、“決められた置き場に決められた品を、決められた量だけ置く”ということです。トヨタでは「仕事に必要なモノは、目をつぶってでも取れるようにしろ」と言われていました。「あれ、どこだっけ?」と探すようなことがあってはならないのです。実際にトヨタの現場の先輩たちは、工具を探すという動きを全くといっていいほどしませんでした。目をつぶってでも、というのは少し大袈裟な表現かも知れませんが、本当に手を伸ばして“取りに行く”という感覚が求められました。「えーっと」などと探す動きが少しもないのです。

車検整備でディーラーに出したことがある人なら分かると思いますが、昔は車検整備には数日掛かっていました。しかし、今では「1日車検」もありますし「45分車検」などもあり、ショールームで待っていればその場で車検整備が終わるようになりました。これは時代のニーズを受けて時間がどんどん短くなっていったわけですが、その裏では現場の動きの効率化がものすごく図られているわけです。45分で車検整備を終わらせないといけないのに、工具を「えーっと」などと探しているヒマはない。だからこそ『3定』は非常に重要なのです。

では、それぞれの「定」について説明していきましょう。

まず「定品」「定置」ですが、どの品をどこに置くかは「使用頻度と距離」がポイントになります。自分がよく使うものを意識して、モノの使用頻度と、自分からの距離を比例させること。より使う頻度が高いモノは出来る限り近くに置く、というわけです。

このコラムにも書いている「動作経済の原則」にも「動きが多ければ多いほど、経済的にもムダが生じてしまう」という表現があったかと思います。ですからモノを置く場所は、次のような配置にしてはならないのです。

・自分がジグザグに動かなきゃいけないような配置 ×
・視線を頻繁に動かさないといけないような配置 ×
・しゃがんだり立ったり動きを大きくしなきゃいけないような配置 ×

そして「定量」については、“決められた量を置く”ということです。例えば、コピー用紙が必要だからといってバックヤードに入りきらないくらい予備を置いておくなどという桁外れの行動は誰もしないと思います。ただ、そこまでではないものの同じようなことが多くの職場で起きているわけです。ストックをなるべく多く持っておくというのは場所のムダですから、不必要な分まで保管する必要はありません。

しかし、足りなくなったら注文しなければなりませんので「ここまで来たら発注する」という「発注点」を決めておき、ルールに従って機械的に補充をするようにすればいいのです。

 

このテーマも含め、原マサヒコにカイゼン・5S・PDCA・時短・等の講演を依頼したい場合はこちらをご覧ください。